【メディア向け勉強会】気候変動下の寒い冬〜国際潮流と求められる報道〜を開催しました!
Media is Hopeは気候変動報道の加速に向け、その時々の重要なトピックスについて専門家をお招きし、メディア向けに解説する「メディア向け勉強会」を定期開催しています。
2026年最初の開催となる今回は「気候変動下の寒い冬〜国際潮流と求められる報道〜」と題し、3名の専門家をお招きしました。
・温暖化が進む中でも極端な大雪が増加するメカニズム
・企業や国家の「法的責任」が問われ始めた、気候変動を取り巻く国際潮流
・課題の現状だけでなく解決策を伝える「ソリューションジャーナリズム」の重要性
以上3点について、最新の知見が共有されました。
開催概要

◼︎日時:2026年1月15日(木) 19:00~20:30
◼︎場所:ビジョンセンター東京虎ノ門(ハイブリッド開催)
◼︎主催:一般社団法人Media is Hope
◼︎後援:国連広報センター
◼︎対象者:メディア関係者 *今回の勉強会は「完全招待制」で開催いたしました。
◼︎登壇者:
川瀬 宏明氏:気象庁気象研究所 応用気象研究部 第一研究室 室長
松尾 雄介氏:日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP) 事務局長
戸沼 君香氏:IDEAS FOR GOOD 元共同編集長
公演の様子
<①気候変動下での寒い冬/気象庁気象研究所 川瀬 宏明氏>

地球温暖化が日本の豪雨や豪雪に及ぼす影響を研究される川瀬宏明氏より、地球温暖化と大雪の関係について、最新のデータと分析手法を用いた解説が行われました。
温暖化の進行で、太平洋側では積雪が減少。「ラニーニャ現象」など、地球規模の自然変動の要因で一時的に厳冬になりやすいとしつつも、温暖化が進行すると、北陸の内陸部や北海道では「短時間に降る大雪」の増加が予測されています。
また、地球温暖化が極端気象の「出現頻度」や「降水量」をどの程度変化させたかを評価する手法「イベントアトリビューション」も紹介。彦根や西日本、札幌、新潟で大雪をもたらした令和4年(2021年〜2022年)の大雪に地球温暖化が及ぼした影響を同手法を用いて解析し、以下の結果が明らかになったと解説しました。
・温暖化により総降雪量は全国的に減少
・「10年に1度の大雪」は北陸の山沿いや北海道で増加
・ 北陸では通常「10年に1度」発生する大雪が、令和4年は約「4年に1度」の頻度で発生
→温暖化がなかった場合は約「20年に1度」。温暖化によって発生確率が約5倍に。
令和7年(2024〜2025年)冬季の大雪にも同様の影響が見られたとし、地球温暖化が豪雪の増加に寄与していることが示されました。
川瀬 宏明氏 プロフィール:
気象庁気象研究所 応用気象研究部 第一研究室 室長。
三重県生まれ。博士(理学)、気象予報士。2007年に筑波大学大学院博士課程を卒業後、海洋研究開発機構、国立環境研究所などを経て、2014年より気象研究所。地球温暖化が日本の豪雨や豪雪に及ぼす影響などを研究している。日本気象学会正野賞、日本雪氷学会平田賞を受賞。著書に「地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題」など
<②気候変動をめぐる国際潮流/日本気候リーダーズ・パートナシップ 松尾 雄介氏>

一般社団法人 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)事務局長の松尾雄介氏より、気候変動を取り巻く国際潮流について最新の動向が紹介されました。
石油会社などの大排出企業による「熱波の発生確率」や「強度」への影響を定量的に測定する研究が進み、「排出者の責任」が注目されていることに言及。日本企業においても「気候リスクへの不作為は責任を問われる」との解釈が広がりつつあるとの見解を示しました。
また、気候変動への対応は自主的な「貢献・努力」から法的な「責任・義務」の世界へと変化していると指摘。変化の象徴として、国際司法裁判所(ICJ)が2025年に「気候変動対策は国の法的義務」とする勧告的意見を公表したことを取り上げました。また、国内での事例として2025年12月の「気候変動訴訟」に触れ、現役弁護士や法学研究者の支援を受け約480人が国を提訴したと紹介されました。
再生可能エネルギーを取り巻く潮流では、トランプ政権下においても再エネ系企業の株価は好調で、化石燃料系は停滞していると解説。リーマンショックやウクライナ情勢などの大きな出来事があってもなお、国際合意や各国の取り組みは継続し、市場も拡大。むしろ、こうした出来事が脱炭素を加速するケースもあると指摘し、講義を締めくくりました。
松尾 雄介氏 プロフィール:
1974年生まれ。一般社団法人 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)事務局長。
株式会社三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)、投資顧問会社でのESG専門リサーチャー、地球環境戦略研究機関主任研究員を経て、2025年7月より現職。2005年ルンド大学(スウェーデン)産業環境経済研究所修士課程修了(環境政策学修士)。キャリアを通じて気候変動と企業の関わりについての研究、実践活動を実施。受賞歴:2010年度 エネルギー・資源学会 第14回茅奨励賞など。主な著書に「脱炭素経営入門(日本経済出版社)」「入門テキスト国際経営(中央経済社)」がある。
<③ソリューション・ジャーナリズムとは/IDEAS FOR GOOD元共同編集長 戸沼 君香氏>

社会課題そのものではなく、その対応について深掘りするジャーナリズム「ソリューションジャーナリズム」。アメリカのSolutions Journalism Networkに認定された日本初のソリューションジャーナリズム・トレーナーである戸沼さんより、その定義や重要性が解説されました。
ソリューションジャーナリズムの効果として、問題のみを報じるニュースと比較し「トピックへの理解度が高まった」「解決したいと思った」「同じ著者/メディアの記事をもっと読みたい」と回答する人の割合が多いというデータを紹介。記者や編集者自身のメンタルヘルスを守ることにも繋がると、その重要性を強調しました。
またソリューションジャーナリズムの「4つの柱」として以下を紹介。
●Response(対応)ー問題になっている事象への対応
●Insight(洞察)ー他の人が、その取り組みから得られる洞察
●Evidence(根拠)ーその取り組みが効果的なことを示す証拠
●Limitations(限界)ーその取り組みにおける制約や課題
問題に対し「すでに行われている対応」とその成果・限界を検証し、次に活かせる知見(再現性)を読者に伝えることが重要だと指摘しました。
さらに、オーディエンスにとって役立つ情報の具体例など、実践的な内容も紹介されました。
戸沼君香氏/IDEAS FOR GOOD元共同編集長:
大学卒業後、東京アメリカンクラブでコンシェルジュとして勤務したのち、ハーチ株式会社にジョイン。4ヶ国語を話す編集者。大学の外部講師も務める。Solutions Journalism Networkによる、日本初のソリューションジャーナリズム認定トレーナー。
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本勉強会は参加者からもご好評をいただいており、講義をきっかけに参加メディアから登壇者への取材依頼が寄せられるなど、報道につながる動きが生まれています。Media is Hopeは今後も、その時々の情勢に合わせたトピックスを取り上げるメディア向け勉強会や、交流会などを開催してまいります。今後の活動にもぜひご注目ください。
本勉強会から報道に繋がった事例
⚫︎[オルタナ]1月下旬の大雪、「温暖化が降水量を9.5%高めた」と専門家
⚫︎[RICEメディア] 【どゆこと?】大雪が温暖化で増えてるってなんで?気象庁に聞いてみた #shorts

