【CCNow翻訳記事】「残りの人生で、一番涼しい夏」
気候変動が世界中で命に関わる猛暑を引き起こしている
CCNow原文: https://coveringclimatenow.org/from-us-story/the-coolest-summer-for-the-rest-of-our-lives/
欧州各地で気温の観測史上最高を記録した近年の猛烈な熱波は、50年前であれば「事実上起こり得ない」ものでした。これは、非営利団体「ワールド・ウェザー・アトリビューション(World Weather Attribution)」による新たな科学的研究で示されたものです。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、「気候変動と地球温暖化の影響により、『一世代に一度』とされるような熱波が、今やほぼ毎年発生するようになっている」と述べています。フランスやドイツなどが記録的な猛暑に見舞われる中、WHOの初期集計では、少なくとも1300人が死亡したと推定されています。
次は北米の番です。今週末、米国の東半分に住む推定2億5000万人が猛烈な熱波に見舞われ、多くの地域で気温が華氏100度(摂氏約38度)を超える見込みです。その後、再び欧州の番となり、同大陸を新たな極度の熱波が襲うことになります。
アジアでも同様の状況が見られます。中国、日本、韓国はいずれも昨年、観測史上最も暑い夏を経験しました。今年5月には、気温が45〜48度に達することが日常的となり、世界で最も暑い都市トップ100のうち97都市をインドが占める事態となりました。カーネギー国際平和財団の報告書は、こうした状況がもたらす人々の苦しみの大きさを浮き彫りにしており、「インドの労働力の約4分の3にあたる約3億8000万人が、とりわけ農業や建設業といった、高温にさらされる分野で働いている」と指摘しています。
この猛暑で最終的に何人が命を落とすことになるのか、現時点ではまだ分かりません。その理由の一つとして、暑さというものが「目に見えない」からだと、『The Heat Will Kill You First(暑さが最初にあなたを殺す)』の著者であるジェフ・グッデル氏は指摘しています。同氏は、ジャーナリストによる記録的な猛暑の報道を支援するために「Covering Climate Now」が6月30日に主催したウェビナーで、次のように語りました。「熱波の最中に人が亡くなっても、銃創のような(明白な)傷跡が残るわけではありません……。そのため、死者数に関する正確な数字を把握するには、当局や関係者によるある種の『捜査』のような作業が必要になるのです。」
実際、2003年に欧州を襲った記録的な熱波による死者数は、当初の報告では1万5000人と推定されていました(この数字は今日でもしばしば引用されます)。しかし、その後の疫学的な分析により、実際の死者数はその5倍近くに上ることが明らかになりました。現在、ある専門家の試算によれば、2026年6月の欧州の熱波では2万人以上が死亡したとみられています。この研究はまだ査読を受けていませんが、著者であるインディアナ大学のクリストファー・キャラハン氏は、熱に関連する死亡者数の推定において確立された手法を用い、フランスで5210人、ドイツで4543人、スペインで3163人、イタリアで2709人が死亡したと結論付けています。
気候変動と記録的な猛暑との間には明白な関連があるにもかかわらず、現在進行中のこの災害について、気候変動との結びつきに言及しない報道が憂慮すべきほど数多く見られます。米国では、ABC、CBS、NBCの各局が6月23日の夕方ニュースで欧州の熱波をトップニュースとして取り上げましたが、メディア監視団体「Fairness and Accuracy In Reporting(FAIR)」の報告によれば、いずれも「気候変動については一言も触れませんでした」。2026年現在、気候変動の要因を特定する科学(気候アトリビューション科学)が高度に発展していることを踏まえれば、こうした報道姿勢はジャーナリズムの観点から到底正当化できるものではありません。
市民の安全を第一に考えた報道は、文字通り人々の命を救うことができます。ジャーナリストは、極端な気象現象に対して地域社会がどのように事態を捉え、対応するのかを形作る「社会インフラ」の一部を担っています。短期的には、人々に迫る危険や身の安全を確保する方法について、正確かつタイムリーな情報を提供することが求められます。しかし、優れた報道はそれにとどまらず、そもそもなぜこれほど命に関わるような猛暑が発生しているのかという根本的な原因についても解説します。つまり、人間が主に化石燃料を燃焼させることで地球を過熱させており、その結果、熱波がより激しく、より長く、より頻繁に発生するようになっているのです。
エクセター大学のサフラン・オニール教授はウェビナーの中で、ジャーナリストが特に避けるべき過ちの一つとして、記録的な猛暑に関する記事に、その暑さをポジティブなもの、あるいは楽しいものとして描く写真や動画を添えることを挙げました。オニール氏らが2019年の欧州熱波に関する報道を対象に行った査読付き研究によると、「街中の噴水で水遊びをしたり、ビーチで楽しんだりする人々の姿」といった「太陽の下で楽しむ様子」を捉えた画像が頻繁に使われていたことが明らかになりました。さらに同氏は、学術的な分析によって次のようなことも判明していると付け加えました。「記事の中で異なるメッセージが混在している場合――つまり、テキストでは『これは公衆衛生上の緊急事態である』と伝えているのに、ビジュアルでは全く別の印象を与えているような場合――人々はビジュアルの方を重視する傾向があり、(猛暑を)……自分たちが気にかけるべき問題ではないと捉えてしまうのです。」
今後さらに気温が上昇することは疑いようのない事実です。現在、地球上の広範囲を容赦なく襲っている猛烈な暑さと不快な湿気は、地球の平均気温が産業革命前と比べて「わずか」1.4度上昇した段階で起きている現象にすぎません。しかし、科学者によれば、地球の平均気温は今後2.7度上昇する見通しであり、人類が化石燃料の燃焼を段階的に廃止しない限り、上昇は止まらないとされています。非営利団体「グローバル・ウィットネス(Global Witness)」で化石燃料関連の調査を統括するパトリック・ゲイリー氏は、ウェビナーの中で次のように語りました。「私が何よりも恐れているのは、もし化石燃料業界が利益を上げるために私たちを死に至らしめるような汚染を続けるのを許してしまえば、今年が私たちの残りの人生において『最も涼しい夏』になってしまうだろう、ということです。」
Covering Climate Now(CCNow)について:
Covering Climate Now(CCNow)は、Columbia Journalism Review と The Nation Magazineが、ガーディアン誌とWNYCの協力を得て共同設立した、世界60カ国500以上のメディアが参加する気候変動報道連携ネットワーク。ジャーナリストが気候危機と解決策について、より有益で魅力的な報道を作成できるよう支援している。日本ではNHKや朝日新聞などが参加し、2023年10月より一般社団法人Media is Hopeも公式パートナーとなっている。日本メディアに向けたローカライズ施策、勉強会などを実施しています。
HP: https://coveringclimatenow.org/