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【YOU ARE THE HOPE #4】地域に根ざした希望を輝かせるために。〜日本全国の〝エネルギー〟を巡るストーリー〜 メディア逆取材シリーズ

【YOU ARE THE HOPE #4】地域に根ざした希望を輝かせるために。〜日本全国の〝エネルギー〟を巡るストーリー〜 メディア逆取材シリーズ

「どんな人がこのニュースを企画してくれたんだろう?」
嬉しいニュースや、学びの多い記事を読んで、こう感じたことはありませんか?

Media is Hope連続企画「YOU ARE THE HOPE」では、気候変動やその他の社会課題に関しての報道を続けてくださるメディア/ジャーナリストの方へ、インタビューを行っていきます。私たち視聴者/読者へ希望を届けてくださる、その方ご自身がHOPE!という感謝をこめて立ち上げた企画です!

メディアを目指したきっかけ、報道にかける想いや、達成したい将来像は様々です。
「気候変動」という難しいテーマに立ち向かう、「メディア」内部を深掘りしていきます🔍

【YOU ARE THE HOPE #4】テレビ朝日アナウンサー 山口豊さんインタビュー

今回お話を伺ったのは、テレビ朝日アナウンサーの山口豊さん。長年に渡り報道番組のリポーターを務められ、災害の現場や温暖化の現状を数多く取材してこられました。

現在では、地域と共生する再生可能エネルギーの取材に注力されている山口さん。再生可能エネルギーを追い続ける背景には、災害の現場を歩き、被害を目の当たりにされてきたからこその想いがありました。

 

1、普段のお仕事内容を教えてください。

太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギー(*以下「再エネ」)の取材を続けています。インターネットや新聞、人脈から得た情報などで取材先を探し、電話でお話を伺って企画の構想を固め、プロデューサーやディレクターと相談して制作に取り掛かるというのが主な流れです。

以前はニュース番組のキャスターを担当していたこともありましたが、取材を重ねるうちに気候変動や再エネにのめり込んでいき、今ではそれがライフワークになっています。

 

2、なぜアナウンサーに?

学生の頃はアナウンサーになるなど考えたこともなく、大学卒業後は日本航空で働いていました。ですが、大学4年生の時にゼミのイベントで務めた司会を、テレビ局に就職した先輩に褒められ、その先輩に勧められて受けたテレビ局の面接で最終審査まで残ったことが、ずっと頭の片隅に残っていました。

当時はベルリンの壁崩壊や湾岸戦争など、社会情勢の変化が凄まじい時期でした。ニュースを見ているうちに「自分はこのまま、今の仕事を続けるだけでいいのだろうか」という気持ちが、沸々と湧いてきたんです。世界で起きていることを自分の目で見てみたい、知りたいという想いが芽生え、アナウンサーへの転職を決意しました。
それからは、働きながらアナウンサースクールへ通う勉強の日々をおくり、晴れてテレビ朝日への就職が決まりました。

 

3、幼少期はどんなお子さんでしたか?

大人しくて真面目な一方で、好きなことにはとことん夢中になるタイプでした。野球が好きで、ラジオの野球中継を聞いたり草野球をしたりしていたかと思えば、当時放送していたクイズ番組に憧れて、学校でもクイズ遊びを企画して司会をしたりしていましたね。

アナウンサーになってからもニュースを伝えるだけでは物足りなく、入社3年目ごろからは自分で企画を組んでディレクターとして取材をしていました。その頃制作した臓器移植のドキュメンタリー番組で、新人賞を受賞したこともあります。興味を持ち始めると突き詰めたくなる性格なんです。自分でも困ったもんだと思います(笑)。

 

 

4、山口さんが気候変動報道に取り組むきっかけを教えてください。問題の現状だけではなく解決策も提案される「ソリューションジャーナリズム」に注力されていますが、なぜ解決策も一緒に伝えていこうと思われたのでしょうか?

グリーンランドの氷河融解など、温暖化の現状を2000年代後半頃から取材していたこともあり、その深刻さは体感していました。ただ、当時はそこまで切迫感を感じていませんでした。これは解決策を伝えていかなければだめだと思ったのは、国内の災害現場での取材でした。 報道番組のリポーターをしていた10年間、夏場はほぼ毎年、豪雨や台風の被害を泥まみれになりながら取材していました。そこには、悲しんでいる人がたくさんいて、カメラを向けられない壮絶な現場があり、被害が年々深刻になっていくことを肌で感じてきたんです。

被害をうけた現場を報道するだけでは何も変わらない。少しずつ募っていたその想いが、2018年の西日本豪雨で頂点に達しました。そこからは今まで以上に、気候変動対策として再エネの取材に邁進するようになり、2020年には本も出版しました。

◼︎「再エネ大国 日本」への挑戦(2020年)
◼︎成長戦略としての「新しい再エネ」(2022年)

 

5、気候変動報道で難しいこと、意識していることは?

テレビは映像が求められるメディアです。企画の第1段階である電話取材では、視聴者を惹きつける映像を撮影できるか、取り組んでいる方の情熱が伝わってくるか、映像化した時のイメージを構想しながらお話を伺います。また、特集内容が二番煎じにならないよう、過去の放送事例も調べます。

今まで焦点が当たらなかったことを発掘して制作までこぎつけるのは中々大変ですが、この分野の報道がまだ主流ではないからこそ、1人でも多くの視聴者の方々に見ていただける、見応えある企画にすることを意識しています。

 

6、企画を考える上での工夫/こだわりは?

どんな技術を取材するとしても、「人」にフォーカスして企画を考えています。ストーリー性があるものは興味を持ってもらいやすいんです。

例えば、ペロブスカイト太陽電池。技術を理解するのは難しいですが、宮坂力教授の発明の過程には、大学院生や海外の研究者などいろんな方々との交流がありました。その人間ドラマが興味深く、そこを深く取材したいんです。
◼︎山口さんによるペロブスカイト太陽電池特集

また、再エネの取材では、現地を訪れて地域の自然や文化と接することも大事です。再エネ普及に取り組む土地は、自然が本当に美しい。再エネは、そうした美しい自然を破壊することなく共生することが何よりも大切で、私は自然との共生に成功した事例しか取材しません。視聴者の方々には、まるで旅をしているかのような気持ちで、その土地の自然や文化も楽しみながら再エネの企画を見ていただきたいと思っています。

 

7、山口さんは報道を通して私たち視聴者/読者に希望を届けてくださると感じています。希望を見出し続け、発信し続けるやりがい、モチベーションは?

変な話なのですが、私自身が「希望を持ち続けたい人間」なんですね。もちろん悲観的な面もありますが、落ち込んでいると辛いですし、いいことはないですよね。だから前向きでありたいと思っていますし、自分だけでなく、どんな方にも希望溢れる社会であって欲しいと願っています。いい年をして青臭いと言われるかもしれませんが、未来は変えられると信じています。気候変動についても、行動すれば未来は変えられるということに気づいてもらえたらと思い、発信を続けています。

思い返せば、世の中の流れに埋もれてしまいそうになりながらも、流されずに、一生懸命何かに取り組む人の姿が昔から好きだったように思います。そうした地道に頑張っている人の姿を伝えることで、世の中の誰かに気づいてもらえることがあったり、喜んでもらえたりすることもありますよね。「社会を良くしたい」という大きな目標に向かって、前向きなメッセージを伝える仕事にやりがいを感じています。

決して、大げさなことを考えているのではありません。100%は難しくても、20%ならできるかもしれない。まずは一歩踏み出してみようと、そういうメッセージを伝えたいんです。

8、今後の展望は?

気候変動に関する報道が注目を集められるように、今後も各地の挑戦を取材していきたいです。みんなが気候変動対策に前向きになれるような番組を1つでも多く制作して、放送できたらいいですね。テレビの良さは、一気にたくさんの方に見てもらえることなんですよね。例えば視聴率1%だと全国でおよそ100万人が視聴したことになるとされています。仮に、その中で100人でも、少しでも明るい気持ちになってもらえたら、それは大きな変化だと思います。

実は、今回制作した番組は視聴率が右肩上がりでした。番組の意図に賛同してスポンサーになってくれる企業も少数ですが現れました。再エネ特番への関心は高まってきていると実感しています。また、サステナビリティに尽力する企業にとっても、Media is Hopeさんが応援してくれるような活気あるイベントで、環境問題に関心のある視聴者にこの番組を通して自社の取り組みを伝えられるという波及効果はとても大きいのではないかと感じます。

◼︎山口さんによる再エネ特番第2弾【緊急報告!再エネ革命 風車が導く奇跡の物語】(2024年)

 

◼︎特別番組「緊急報告!再エネ革命 風車が導く奇跡の物語」の パブリックビューイングイベントに山口アナウンサーが参加!(テレビ朝日公式 SUSTAINABILITY siteより)

9、これから気候変動に関する報道に踏み出すメディア関係者へのメッセージをお願いします。

残念ながら、気候変動がテーマの報道はまだマイナーです。問題意識が広がらず、社内で孤立したり、悔しさを感じたりすることもあるかと思います。

ですが、気候変動やその対策を報道することの重要性に気づいてくださる視聴者、読者の方は確実に増えています。昨年、学校の先生方による「暑さの原因報道して」という署名がありました。そこから1年、今年の6月には、「気候危機に関する気象予報士・気象キャスター共同声明」が発表され、天気予報内での気候変動に関する言及が増えてきています。つまり1年で、状況が大きく変わったんです。この先も確実にこの機運は活発になっていくと思います。

一歩、行動に踏み出すことって、すごく勇気がいることですよね。この分野の報道は大変なこと、凹むこともありますが、励ましあって、希望を持って取り組んでいきたいです。私も、同業の方の記事や番組に励まされています。

 

10、視聴者/読者へのメッセージをお願いします。

今の世の中は、良いニュースが少ないと感じています。ですが、課題解決型、提案型の報道をすることで、僅かかもしれませんが、世の中を良くできる部分はあると思うんです。

私が取材を通して確信していることは、再エネが1つの鍵となって元気になれる場所が、日本の地方を中心にたくさんあるということです。日本の再エネポテンシャルは、人口減少で苦しむ地方にこそ、大量に眠っているのです。
大切なことは、地域の人が主体になって、自然と共生する形で再エネを導入すること。そのようにして地域が活気づけば、やがて、東京一極集中から分散型社会への移行が始まるのではないでしょうか。それぞれが生まれた土地で誇りを持って働き、日本全体でみんなが豊かになれる。そういう夢も持ちながら報道を続けていきたいと思っています。

 

11、休みの日の過ごしかた

子供が小さい頃は、よく家族で出かけていたのですが……今は1人になることも多いので、家でのんびりしています。大学時代はバンドを組んでいたので、音楽を聞くことも好きです。特に好きなのは「ダリル・ホール」というミュージシャン。もう70歳代後半なのですが、いくつになっても自分が好きなことを貫く姿が格好良く、生き方も含めて憧れています。

<山口豊>
さいたま市生まれ。日本航空勤務を経て、1992年にテレビ朝日に入社。以来30年、報道番組を中心に活動。報道ステーションでは10年にわたり、日本国内、世界の災害や温暖化問題の最前線を取材。気候変動対策として再生可能エネルギーの現場を取材し、YouTube「山口豊アナが見たSDGs最前線」は延べ700万回再生を超えている。Media is Hope AWARD 2023 下半期 個人賞受賞。

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