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【YOU ARE THE HOPE #3】ゼロからイチへ導く、メディアとしての「サステナブル」〜伝え続ける、サステナビリティに取り組む目的〜 メディア逆取材シリーズ

【YOU ARE THE HOPE #3】ゼロからイチへ導く、メディアとしての「サステナブル」〜伝え続ける、サステナビリティに取り組む目的〜 メディア逆取材シリーズ

Media is Hope新企画「YOU ARE THE HOPE」では、気候変動に関して報道を続けてくださるジャーナリストや、脱炭素に尽力するメディア関係者にインタビューを行っていきます🎙️

気候変動対策はどの企業にも求められており、私たち視聴者/読者へ情報を届けてくれるメディアもその当事者です。今回は、一企業として脱炭素などサステナブル領域に注力し、実践と発信の両輪を通して輪を広げる、メディアの枠を超えた取り組みについてお話を伺いました!

気候変動という難しいテーマに挑む、メディア内部を深掘りしていきます🔍

【YOU ARE THE HOPE #3】ハースト婦人画報社 サステナビリティマネジャー 大竹紘子さんインタビュー

大竹さんは、ハースト婦人画報社サステナブル部門唯一の専任として、社内での様々なプロジェクトを牽引されています。その先進的なサステナビリティへの取り組みは、様々なメディアから注目を集めています。

前例が少ない中、答えのない課題へ挑戦を続ける大竹さん。前職のアパレル業界での経験と知識を活かし、「さらにサステナビリティの業界を盛り上げていきたい」と笑顔で話してくださいました。

 

1、普段のお仕事内容を教えてください。

サステナビリティに関することであれば、 一言で言うと「全部」を担当しています。
環境問題だけではない、社会課題も含めたサステナビリティを対象として、社内での企画を立ち上げたり、プロジェクトをリードしていくというお仕事をしています。

 

2、今のお仕事に就かれた経緯は?

以前はアパレル業界にいて、工場の視察や、海外に出張に行くような仕事をしていました。
巨大な工場では、ものすごい量の原材料と、熱を肌で感じられるほどのエネルギーを使って、毎日大量の服が生産されていくんです。当時はファストファッションが普及し始めていたこともあり、あれだけの原材料とエネルギーを使って作られたものがどれだけのスピードで捨てられてしまうのだろうと想像したら、恐怖を覚えました。

当時働いていたのは、最低賃金や労働環境が保証されているような会社ではあったのですが、工場で働く工員さんが幸せそうではない、ということも感じていました。私には好きな仕事をやる自由があるけれど、あの方たちには「自分の権利」がどれだけあるのだろうと、出張帰りの飛行機でたびたび悶々としていたことを覚えています。

仕事自体はすごく好きだったのですが、自分が普段「当たり前」だと思って生きている環境とは全く異なる景色を見る機会も多く、「私が今やっていることは、正しいか、正しくないか」という想いが込み上げてきたんです。

そして同じファッション業界の中でも、自分の仕事を通して、環境課題や社会課題を少しでも解決できるような仕事をやりたいと思い、今の仕事に就きました。

 

3、幼少期は、どんなお子さんでしたか?

中学生くらいまでは、母親に心配されるほど天真爛漫な子でした。
外で遊ぶことも、すごく好きでしたね。

一方で、幼稚園くらいのときには、お風呂でシャンプーの泡が排水溝に流れていくのを見て、怖くなったことも覚えています。「この泡で地球が汚れちゃう」と思ったんです。元々、特に環境面に関しては、興味や関心を持ちやすいタイプなのかなと思います。

4、 ハースト婦人画報社さんは、サステナビリティに関して様々な形で企画、発信をされていますが、社内で企画はどのように決まっていくのでしょうか?

会社の大方針を受けて、それを実践すべくプロジェクト化してそれぞれの部門に展開しています。

気候変動に関しては、当社では「最重要課題」に位置づけられています。
まず一番最初に、会社としてどのくらいの温室効果ガスが出ているのか、コーポレートフットプリント(CFP)を算定しました。会社としては初めての事だったので、算定を担当する社員が基礎的な知識を学ぶところから始めるなど、それなりに時間を費やしました。結果を分析すると、排出量が多い部門、比較的手のつけやすそうな部分も見えてくるので、それぞれに対してプロジェクト化をしています。

もうひとつ、力を入れている分野が「教育」です。誰でも情報発信ができるこの時代に、「プロフェッショナルとして、信頼されるメディアを目指す」という全社的な目標が決まったことを受け、社員向けに「グリーンウォッシュ研修」を開始しました。

◆ハースト婦人画報社の気候変動へのアクションはこちら

 

5、CFP算定などは、かなり専門性が高い分野ですが、こういった知識はどのように情報収集をされたのでしょうか?

前職のアパレルでもサステナビリティに関する部署にいたこともあり、ある程度の基礎知識はあったと思います。そこでの基礎知識や経験を、今の仕事に活かせている部分も少なくありません。ですが、常にアンテナを張って、新しい情報にキャッチアップしていくことはすごく重要だと思っています。CFP算定に関しては特に、環境省主催のプロジェクトやセミナーなどで勉強をしたり、そのような機会を通して相談出来る専門家の方達とのコネクションを作ったりしました。

 

6、サステナビリティに関する企画を推進する際に意識していること、難しいことは?

過去の企業経験の中でサステナビリティに関する事業をやってきてすごく感じたのが、「サステナビリティ疲れ」が、確実にどの部門でも起きているということです。普段の自分の仕事がある中で、新しいことを学び、数値目標を立て、会社として結果を出さなければいけないという意識に囚われて、社員が疲弊してしまうんです。

今の会社に転職をし、自分が企業のサステナビリティをリードしていくからには、できる限り「やらされてる感」を軽減し、社員を疲弊させたくないということも目標のひとつにありました。
私たちが情報を発信することの重要性や、このプロジェクトが何に貢献できているのか、その目的など、やりがいを感じてもらえるメッセージと共に発信することを常に忘れないようにしています。

社内では日々色々なセミナーを開催しており、終了後に毎回アンケートを行っています。感想や難易度、頻度について感触を聞き、そこに寄せられた声はなるべく次の企画に反映させて、押したり引いたり、バランスを見ながら進めています。押し付けにならないように、社員の自主性を重んじることも重視しています。まだまだ完璧ではないので挑戦は続いていますが。

 

7、社内へサステナビリティを浸透させる活動をされているとともに、貴社の取り組みを企業に広める働きかけもされています。どのような想いがあったのでしょうか?

やはり、プロジェクト推進は時間と労力を要するものなので、自分たちが苦労したものを、他の企業様も1から同じように経験する必要はないと思っています。皆さんに、少なくとも当社の今までの取り組みで見えた部分を共有し、その輪を広げて業界を盛り上げていきたいと考え、勉強会をはじめとした社外向けの発信を始めました。

「みんなで取り組んで初めて、この大きな課題に立ち向かっていける」という想いが、私たちが社会に対して情報発信する理由のひとつになっています。皆さんと一緒に力をあわせていきたいと思っています。

CFP算定に関するメディア向け勉強会についてはこちら

Media is Hopeも参加したCFP算定勉強会の様子

8、やりがい、モチベーションは?

サステナビリティに関する仕事は前例が少ないので、1から作り上げる「産みの苦しみ」ももちろんあります。ただ、それを展開したときに、興味を持ってくださる方がいたり、参加者の成長を感じたり、そういうものはやっぱりすごく嬉しいです。

社内向けのグリーンウォッシュ研修を開始して半年ほど過ぎた頃、グリーンウォッシュに関する社員からの質問の質が、だんだんと高度なものに変わってきたんです。そういった成長を感じた時、自分が社内に対して言い続けていることが自分の期待以上の成果に繋がっていると感じて、嬉しかったです。

メディア向けに発信をして、取り組みに対して共感やポジティブなコメントをいただいたときなどは、「自分のやっていること、向かっている方向は間違っていない」という安堵感も感じます。

社内外問わず、色々な方がプロジェクトに興味を持ってくださること自体が、モチベーションや原動力になっているなと思います。

 

9、今後、気候変動に関するどんな取り組みをしていきたいですか?個人的な展望はありますか?

やはりメディアとして、質の高い情報発信をもっとできるようにしたいと思っています。
「質の高い」というのは、皆さんに読んでもらえる、魅力的で信頼できる、そして行動変容に繋がるような記事です。ハースト婦人画報社はそういった取り組みや情報発信をしているというイメージを持っていただけるように、まずは私にできることをやっていきたいと思っています。

また、自分が情報発信をしたもので社会が変わる、読者の方の行動変容に繋がっていると直に感じられるようになると、社員のモチベーションアップに繋がると思っています。現在取り組んでいることが、本当に目指すべき、社会への課題解決に繋がっているのだと感じてもらえるようにすることが、次なる目標です。

 

10、休みの日の過ごし方

普段都会で働いて、都内に住んでいるので、できる限り自然が豊かなところに行くのが好きです。よく海の近くで過ごしたりしています。うちのわんちゃんを海辺で走らせたりとか、自然に触れられるところで、まったりしています。

最近「ヴィンテージ」の洋服にも興味を持って、リサーチをし始めました。
まだまだファッション業界は課題が山積みだと思っています。今後は「長く着る」ことを通して貢献していきたいと思っていて、素敵なショップを調べて行ってみる、ということもしています。

<大竹紘子>
ハースト婦人画報社/ハースト・デジタル・ジャパン、社長室サステナビリティマネジャー。長年ファッション業界に勤め、各国の生産現場を視察する中、環境問題、社会問題を目の当たりにし、以降サステナビリティをライフワークにしようと一念発起。2022年夏より現職。企業としての脱炭素、そしてメディアならではの発信力の両輪で、サステナブルな取り組みの和を広げ続けている。
*ハースト婦人画報社:Media is Hope AWARD 2023年間 ソリューション賞受賞。