【 YOU ARE THE HOPE #1】読者に寄り添い挑む「読まれる工夫」。〜「ハフポスト」というメディアと中田真弥〜 メディア逆取材シリーズ
嬉しいニュースや、学びの多い記事を読んだ時。
「どんな人が担当してくれているんだろう?」
こう感じたことはありませんか?
Media is Hope新企画「YOU ARE THE HOPE」では、気候変動やその他の社会課題に関しての報道を続けてくださるメディア/ジャーナリストの方へ、インタビューを行っていきます。私たち視聴者/読者へ希望を届けてくださる、その方ご自身がHOPE!という感謝をこめて立ち上げた企画です!
メディアを目指したきっかけ、報道にかける思いや、達成したい将来像は様々です。
「気候変動」という難しいテーマに立ち向かう、「メディア」内部を深掘りしていきます🔍
【YOU ARE THE HOPE #1 】ハフポスト日本版、中田真弥さんインタビュー
思わずクリックしたくなってしまうタイトルと、深く真理をついた記事で、取材先から「こちらが言いたいことをちゃんと伝えてくれている」と信頼が厚い記者さんです。
社会課題について幅広く記事を書かれている中田さん。
数ある社会課題を報道する上での信念や覚悟までも、言葉の端々に感じられました。
1、日々、どのような業務をされているのか教えてください。
「記事を書く」ことがベースで、「気候変動」「生物多様性」「ジェンダー」「人権」「サステナビリティ」関連の記事を書いています。それ以外にも、動画制作やインスタグラム、 YouTube での動画の作成などを担当しています。
色々な表現手法を持っていた方が「情報をどう届けるか」を考えるときの手段が多いので、楽しみながらやっています。
表現方法にとらわれず、伝えるべき人に伝えるべきことを伝えたいです。
2、なぜ記者に?
高校時代に、2つのきっかけがありました。
1つめは、高校の図書室にあった報道写真の雑誌。一番記憶に残っているのが、パレスチナで亡くなった少女の写真です。瓦礫に埋もれて、真っ白になって亡くなった少女の写真でした。その少女の写真を見て、「自分は【死ぬ】ということを知った気でいて、知らなかったんだ」「この真っ白な少女の写真が死ぬってことなんだ」ということに、すごく衝撃を受けたんです。
もう1つは、時事ニュースを英語で学ぶ「時事英語」という授業。
そこで、「ベトナム戦争では報道によって世論が変化していって、戦争が終わりに向かった」ということを知って。そこから大学で「ジャーナリズムとは何か」を学んでメディア業界に入りました。
3、幼少期はどんな子供でしたか?
母がランドセルに明日の荷物を入れておいてくれても、1回全部出して、もう1回自分でやらないと気が済まない、みたいなこともあったようで、「自分でやる」ことにこだわりがある子でした。
高校時代は軽音部でギターとベースを弾いていたり、国際交流のボランティアをしたりしていました。大学時代はアパレルでアルバイトをしていたんですが、店長になって、授業の間にクレーム対応をしたのも今となってはいい思い出です。
振り返ると、常に自分のやりたいことがあった若い頃だったなと思います。
4、気候変動報道で意識していることは?
気候変動でいうと「気候正義」「ジャストトランジション」の視点は忘れないようにしています。気候変動の被害を受ける当事者の一人である「若者」への取材も多いですが、「若者」といってもそれぞれ意見や今いる環境が違うので、主語の大きさや言葉の使い方にはすごく気をつけています。
もう一つは「難しいことを簡単にまとめてしまわない」こと。色々な問題と繋がっていて複雑な気候変動問題ですが、「難しい複雑なこと」を、無理やりわかりやすく簡単にまとめるのではなく、「難しくて複雑だ」ということをどうやってわかりやすく伝えるか?を意識しています。
ーそうした視点で書かれた記事をいくつかご紹介いただけますか?
今も、そして将来に渡って気候変動の被害を受ける当事者の意見を政策決定プロセスに入れるべきだ、という問題提起をした記事がこちらです。
◆国会の参考人「高校生は難しい」地球温暖化対策に関する衆院環境委員会の裏側で起こったこと
また、人が集まって社会に価値を提供する「ビジネス」の力も大きいと考えています。上記のようなシステムチェンジの話と、下記のようなビジネスや個人の選択肢の話を、行き来しながら記事を書いています。
◆渋谷のヴィーガン居酒屋に行ってみたら、唐揚げが美味しすぎて驚いた。お腹も心も満たされる「メニュー表」の仕掛けとは
5、「ハフポスト」は、どんなメディアですか?
ハフポストは「意思を持ったメディア」だと思っています。「中立」のつもりが、結果的に問題になっている社会構造に加担してしまうこともあります。だからこそ、その問題に対して「どの立場から報道するのか」を常に意識して、勇気を持って発言してくださった方が伝えたい本質的なところは外さないように伝えることを意識しています。
個人の声を尊重し、新しい価値観を提案して風を起こし、社会をより良くしていくことを目指しています。
ハフポストを一言で表すなら、「本気で社会課題を解決することを目指すメディア」です。
6、中田さんの記事は、思わずクリックしたくなる「見出し」が印象的ですが、どうやってタイトルを考えられているのでしょうか?
「これは、どこから記事を読む人に読んでもらえる記事なのか?」ということを意識しています。 ハフポストのサイトに直接アクセスしてくれる人なのか、SNSからニュースを読む人なのか、ニュースプラットフォームからなのか、検索エンジンからなのか。それによってタイトルもちょっと変えています。
記事を出すスケジュールも自分で決めますが、それも「いつが一番読んでもらえるタイミングか」を考えて決めています。
7、気候変動、ジェンダー、戦争についてなど、幅広い内容を執筆されていますが、毎回の取材内容はどのように決められていますか?
ご縁があってお声をかけていただくことも多いですが、社会課題は色々繋がっているので、「持続可能な未来をつくるために、今伝えるべきこと」という軸は、一貫しているかと思います。様々な社会課題がある中で、「今私が伝えた方がいいことは何だろう」ということをいろいろ考えながら取材をしています。
8、気候変動報道で難しいと感じていることは?
「気候変動に関しての記事は読まれない」と言われますが、切り口や、その見せ方次第では読まれる記事もたくさんあります。
「読んでもらえるようにする工夫をする責任」がメディアにはあると思っているので、そこは難しいけれどもチャレンジしているところです。
9、報道を続けてきて嬉しかったこと、モチベーションは?
嬉しかったことは、「こんなに自分の伝えたかったことをわかってくれた記者さんは初めてです」って言ってもらえたこと。こういった言葉は「本意ではないことがメディアを通して伝わってしまう」構造が前提にあっての言葉だと思うので複雑な気持ちもありますが…。あとは、「この前の記事良かったです」とか「小さな声も記事に反映してくれて嬉しかった」とか、記事を読んでくれた人が感想を寄せてくれると、やっぱり嬉しくて、モチベーションになります。
「社会課題に持続可能に向き合っていくためにはどうすればいいか」を日々考えています。「持続可能性が最強」が、私の働くテーマなんです。
私1人ができることは本当にわずかなのですが、「どうせ自分の時間を使うんだったら、ちょっとでも社会が良くなることに使いたい」と思って働いています。
10、今後どんな気候変動報道をしていきたいですか?個人的な展望はありますか?
気候変動で言うと、「気候変動やばいのはわかったけど、どうすればいい?」というところが、まだわかりにくい部分があるのかなと思っています。そこをわかりやすく伝えたいなっていうのがありますね。
気候変動のことって、「個々人がやらなきゃいけないこと」ももちろんあるけれども、それだけでは足りなくて、やっぱりシステムチェンジをしなきゃいけない。
ここは「鶏が先か卵が先か」なんですが、「個々の動き」と「システムチェンジ」はどういうふうに繋がっていけるのか、というようなところを、もう少しハードルを低く伝えられたらいいなと思っています。
この数年は「危機感」を伝える報道が多く、段階的にそれは必要な報道だったと思います。一方で、危機感で動いてくれる人は、もう動いてるんじゃないかとも思っていて。
そうではない人たちの意識をどういう風に、もう少し気候変動の方に向けてもらうか?というところで、次は「具体的な希望」とか、「その希望に沿ってどういう行動をしてる」とか、そういうところをもっと可視化していきたいなと思っています。
個人や企業、団体の「やばいからやる」ももちろんそうですし、「こういう未来がいいよね」みたいな希望に向かって動ける人もいると思うんです。なので、より多くの人を巻き込んでいけるようなコンテンツをどんどん出していきたいです。
11、休みの日の過ごし方
近所に、タヌキもへびも、鳥も魚もいっぱいいる、自然豊かな小さい川があるんですよ。そこで、生き物等をポケーっとみたり、散歩したりしています。あとはガーデニングをしたり、読書をしたり、友人とおしゃべりしたり…何気ない幸せを噛み締めています。
<中田真弥>
ハフポスト日本版ニュースエディター。パートナースタジオ、コンテンツデザインチームを経て、2022年11月より、編集部に異動。関心テーマ:気候変動/生物多様性/人権/ビジネス/SDGsなど。Media is Hope AWARD2023 年間個人賞受賞。
<聞き手:渡辺みさき>
Media is Hope キャンペーナー 兼 パティシエ